座りますか?

電車の中でいつも思うこと。 「みんな疲れた顔をしているなぁ」 特に混んでいる電車だと、疲れた顔をしている人がわんさかいるが、 誰も一言も口をきこうとせず、 聞こえるのは、車内アナウンスと、 ガタンゴトンゴトン・・・という音だけ。 そんな中で、今日、やたらと愛想の良いお兄さん(おじさん?)がいた。 30代後半〜40代くらいのサラリーマン。
おじさんの立っていた目の前の席が空いたとき、
周りの人たちに笑顔を振りまいて
「座りますか?」「座りますか?」と一人ずつ聞いていく。
座りたかった人もいただろうが、そんな風に愛想良く聞かれたことに
戸惑っている様子で、だれも返事をしようとしない。
すると、「じゃあ、座ります。すみません。」と妙に低姿勢でニコニコ嬉しそうに座った。

その後も、おじさんは、どんよりした満員電車の空気をものともせず、
足下に置いた自分の荷物が誰かにふれると、「すみません、邪魔ですね」「大丈夫ですか?」と
ニコニコしながら、あいかわらず返事をしない他の乗客に接していく。

明るくコミュニケーションをとる人だなぁ、すごいなぁ、と感心していたら、
座ってしばらくすると、目の周りが紅潮してきて、眠ってしまった。

なんだ、酔っぱらいか・・・。

と思ったが、酔っぱらいだとわかった途端、なんだかちょっと複雑な気持ちになった。
酔っぱらったことで、あんなに気持ちの良いコミュニケーションができるのかな、
それとも、あのおじさんはシラフでも、こんな感じなのかな・・・。

確かにそのおじさんは電車の中で目立った存在だったけど、
周りの人は、おじさんが座ることをイヤな気持ちで見る人はいなかったと思う。
日々、疲れた顔をして電車に乗り、
空いた座席に運良く座っていく人たちをねたんでしまうような中で、
そのおじさんに対しては、ねたんだりした人はいなかったのではないだろうか。

酔っぱらいでも、酔っぱらいじゃなくても、
普通にこんなやりとりが出来る電車内だと、楽しいだろうなぁ。

「座りますか?」
「あ、いいですか、すみません。今日は歩きすぎて足にまめが出来て痛かったので助かります」
「どうぞ」

「座りますか?」
「いえ、次降りるので、どうぞ」
「では、遠慮無く」

「座りますか?」
「実は、さっきから頭が痛かったので助かります」
「大変ですね、どうぞ座って下さい」

「座りますか?」
「あなたの方が疲れているみたいなので、どうぞ。どこで降りますか?」
「○○駅です。」
「じゃあ、僕はその後で座らせてもらいます。」

書くと簡単そうなんだけど・・・。
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