8時ちょうどのあずさに乗る人たち

甲府に向かうスーパーあずさで出会う人たちの多くは、大きなザックをしょっている。 どこからみても「これから山に登ります」という人たち。 きっと魅力的なスポットが沢山あるんだろうなと、勝手に想像を膨らませていた。
八王子でやはり大きなザックをしょった山登りスタイルの女性が乗り込んできた。
その時間のあずさの中は、半分以上がそういうスタイルの人たちなので、とくに気にもせず
私は文庫本に集中していた。
すると、その女性は私の方にスタスタと近づき
「おはようございます」と。
反射的に「おはようございます。」と答え、顔を上げた。
一瞬、知り合いかと思ったが、全く知らない人だった。
50過ぎくらいに見えるやさしそうな女性だった。
私の隣が指定席のようだった。

山では知らない人同士でもすれ違ったときは挨拶を交わす。
きっと、家を出た時から気持ちは山に行っているんだ。
ただ、電車の中でおなじように挨拶されただけで、一緒に山の空気を吸った気がして気持ちよかった。

暫くすると、女性は山の地図を広げて眺めていたので
「どこの山に登るんですか?」と声をかけてみた。
すると「○○岳です。山はお好き?」と聞かれたので
「四国の石鎚山にしか登ったことはないですが、石鎚は大好きです」と答えた。
「石鎚にのぼったのなら、どこでも大丈夫よ。」と笑ってくれたので、
「今日行く山は何時間くらいかかるのですか?」と尋ねると
「1週間かけて歩くのよ。今日はここまで。」と指さしてくれた。

予想以上だ・・・。
通りであずさに乗ってくる山登りスタイルの方々は重装備なはずだ。
石鎚は西日本最高峰だが、日帰りできる。
雪の積もった初冬の石鎚にのぼったときも日帰りだった。
(前日から麓の旅館に泊まってはいたが)

「すみません。とんちんかんな質問して」
「いえいえ、暇が出来たら行ってみると良いわよ」
と優しく答えてくれた。

これまで山登りと言えば石鎚だった。
夏山と紅葉のシーズン。初冬の石鎚と3シーズン登ったが、
「西日本の旅」で初冬の石鎚にのぼったときから、私は石鎚が大好きである。
石鎚のブナ林の中にいると、体の奥底の魂の部分から浄化される気がする。
ブナの木に腕を回したときの、癒やされた感覚は、今思い出しても涙が出る。

もちろん、その事に気づかせてくれた白石旅館の奥さんとアマチュア(?)写真家の山下いくよさんは、一度しかご一緒したことがないけれど、私の中の大切な人だ。

石鎚のブナの木に会いに行きたいと、強く思った出来事だった。
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