手袋
少し前の出来事。
関東地方一円には雪が積もっていた日曜日の朝。
のりかえの地下鉄を待っていたとき、
私の後ろに並んでいたのは20歳くらいの女の子2人組だった。
どうやらその日は試験を受けに行く様子。
聞こえてきた話からすると、看護学校の試験か、看護士の国家試験かだろうと思う。
私もとある試験を受けに行くところだったので、
「お互い頑張ろうね」なんて心の中で思っていると、
突然「あーーーーーっっ、手袋がない」と一人の女の子。
「なんだか右手が寒いと思ったら、手袋してない。落としたかも。」
と、持っていた鞄の中をがさごそ・・・、コートのポケットをがさごそ・・・
「あったぁ〜」
「よかったね」
「よかった〜、私いつの間にか自分ではずしてたんだね。
あー、これでだれも転んでないね。よかったよかった!
手袋がなくなるのもショックだけど、
私の落とした手袋を踏んで誰かが転んじゃう方がもっとショックだもんね。」
自分の落とした手袋を踏んで誰かが転ぶ・・・
私にはない発想だった。
電光掲示板を見るふりをしてさりげなく振り向いて彼女たちを見ると
ごくごく普通の20歳くらいの女の子。
あなたのその思いやりのある発想は、どうやって培われたの?と聞いてみたくなった。
かたや私は、試験前ということもあって
自分が転ばないように、すべらないようにと自分のことで精一杯。
結局、家の近くの坂道でつるっと滑ってしまった。
その日に受けた試験も・・・。
きっとその子たちはその日の試験、成功していると思う。
いい看護師さんになるだろうなぁ。